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Ryzen AI 9 HX 370のベンチマーク

ここでは、AMD Ryzen AI 300シリーズプロセッサーの1つの「Ryzen AI 9 HX 370」の各種ベンチマークスコアを掲載します。
最大 50 TOPSのNPUを搭載し、CPUおよびGPU性能も高く、高性能ノートPCで採用されるプロセッサーです。ただ、現状ではRyzen AI 300シリーズのNPUを利用しているアプリはほとんどないため、ここでは主にCPUおよびGPU性能に関するベンチマークスコアを掲載します。
プロセッサーの仕様
主な最新のAMD Ryzenプロセッサーは下の通りです。この中でRyzen AI 9 HX 370は、Ryzen AI 300シリーズ「Strix Point」という開発コード名のプロセッサーで、デフォルトTDPは28Wと抑えられているものの、CPUもGPUも性能は高く、さらにNPU性能は高く、万能なプロセッサーです。
開発コード名 | デフォルト TDP |
NPU | |
Ryzen AI
Max 300 シリーズ |
Strix Halo | 55W | 最大 50TOPS |
Ryzen AI 300 シリーズ |
Strix Point | 28W | 最大 55TOPS |
Krackan Point | 28W | 最大 50TOPS | |
Ryzen
8040 シリーズ |
Hawk Point | 28 - 45W | 最大 16TOPS |
Ryzen AI 300シリーズ「Strix Point」のラインナップは、下表の通りです。
CPUは「Zen 5」のコアと、インテルCPUで言えば高効率コアにあたる「Zen 5c」のコアのハイブリット構成で、GPUはRDNA 3.5世代のRadeon 800Mシリーズ搭載。さらにAI処理用のNPUを搭載しています。
これらのプロセッサーのうち、今回ベンチマークを計測したのが真ん中の性能の「Ryzen AI 9 HX 370」です。NPUパフォーマンスが若干落ちるものの、それ以外は上位のRyzen AI 9 HX 375とほぼ同じ性能です。
Ryzen AI 9 HX 375 | Ryzen AI 9 HX 370 | Ryzen AI 9 365 | |
コア / スレッド数 | 12 / 24 | 10 / 20 | |
アーキテクチャ | Zen 5 ×4 | Zen 5 ×4 | |
Zen 5c ×8 | Zen 5c ×6 | ||
最大クロック | 5.1GHz | 5.0GHz | |
ベースクロック | 2GHz | ||
L2 / L3キャッシュ | 12MB / 24MB | 10MB / 24MB | |
デフォルトTDP | 28W | ||
cTDP | 15-54W | ||
グラフィックス・モデル | Radeon 890M | Radeon 880M | |
GPUコア数 | 16 | 12 | |
NPUパフォーマンス | 最大 55 TOPS | 最大 50 TOPS | |
Total Processor Performance | 最大 85 TOPS | 最大 80 TOPS | 最大 73 TOPS |
ベンチマークの計測に利用したノートPC
今回、ベンチマークの計測に使用したノートPCは、ASUSの次の2機種です。
このノートPCに、CPU使用率が100%になる高い負荷をかけたときのCPU電力は、次の図の通りです。なお、どちらのPCも高いパフォーマンスが出るモードの設定で、計測しています。
Ryzen AI 9 HX 370のデフォルトTDPは28W、cTDPは15-54Wですが、TUF Gaming A14は約80Wと非常に高いCPU電力で推移しています。一方、Zenbook S 16は、デフォルトTDPの値に近い30W前後のCPU電力で推移しています。
このように、機種によって動作するCPU電力に大きなが差があるので、当然パフォーマンスもかなり違ってきます。

CPU関連のベンチマークスコア
まずはCPU関連のベンチマークソフトのスコアと他のプロセッサーと比較したグラフを掲載します。
CINEBENCH R23
まずは、CINEBENCH R23のスコアを掲載します。
TUF Gaming A14に搭載されていたRyzen AI 9 HX 370は、Core i7-14700HXを超える高いマルチコアスコアが出ていました。シングルコアについても、Ryzen 9 7945HXを上回るスコアでした。
一方、Zenbook S 16のRyzen AI 9 HX 370は、3分の2ほどの数値しか出ませんが、それでもCore Ultra 7 155Hよりは高いマルチコアスコアでした。
~ CPU性能の評価 ~


:レビュー機で計測したスコア(他のスコアは別のPCで計測した代表値)
CINEBENCH 2024
次に、CINEBENCH 2024のスコアを下に掲載します。
こちらは、TUF Gaming A14に搭載されていたRyzen AI 9 HX 370は、Core i7-14700HXよりは低いマルチコアスコアでしたが、それでも近い数値でした。
Zenbook S 16のRyzen AI 9 HX 370は、大分スコアが落ちますが、Core Ultra 7 155Hよりは高いスコアでした。


グラフィックス関連のベンチマークスコア
次はグラフィックス関連のベンチマークスコアを掲載します。
なお、グラフィックス性能はメインメモリの速度にも影響され、メモリの帯域が広いとグラフィックス性能も高くなります。今回のPCに搭載されていたメモリは、LPDDR5x-7500で非常に広い帯域があります。
3DMark Night Raid
3DMark Night Raidのスコアは以下の通りです。「グラフィックスのスコア」の部分が、グラフィック性能を評価する指標となります。Ryzen AI 9 HX 370には、内蔵グラフィックスに「Radeon 890M」を搭載しています。なお、TUF Gaming A14はGeForce RTX 4060を搭載していますが、ここではこのRTX 4060を無効にして、CPU内蔵グラフィックスを使用するようにしています。
TUF Gaming A14の場合、かなり高いスコアで、GeForce RTX 1650に近い数値が出ています。
Zenbook S 16の場合、Core Ultra 7 155Hとほぼ同等のスコアでした。
~ グラフィックス性能の評価 ~


ゲーミング性能
以下、ゲームをしたときのフレームレートを掲載します。比較的軽めのゲームを選んで検証しています。
ファイナルファンタジー 14 黄金のレガシー
ファイナルファンタジー 14については、Ryzen AI 9 HX 370は、Core Ultra 7 155Hよりも低い平均フレームレートでした。
![]() ファイナルファンタジー 14 黄金のレガシー
|
|||
---|---|---|---|
解像度 | 品質 | TUF Gaming A14 | Zenbook S 16 |
1920x1200 | 標準(ノートPC) | 52 fps | 49 fps |
ブループロトコル
ブループロトコルは、Core Ultra 7 155Hよりも高く、TUF Gaming A14については、Georce GTX 1650に近いスコアが出ていました。
![]() ブループロトコル
|
|||
---|---|---|---|
解像度 | 品質 | TUF Gaming A14 | Zenbook S 16 |
1920x1200 | 低画質 | 118 fps | 105 fps |
中画質 | 65 fps | 58 fps |
PSO2 ニュージェネシス
PSO2 ニュージェネシスも、TUF Gaming A14のRyzen AI 9 HX 370であれば、Georce GTX 1650に近いスコアが出ていました。。
![]() PSO2 ニュージェネシス
|
|||
---|---|---|---|
解像度 | 品質 | TUF Gaming A14 | Zenbook S 16 |
1920x1200 | 最低 | 138 fps | 109 fps |
中 | 74 fps | 57 fps |
クリエイターソフトの処理時間
次に、クリエイター向けソフトで計測した各種処理時間を掲載します。
Adobe Lightroom Classic CCによるRAW現像時間
Adobe Lightroom Classicにおいて、100枚のRAW画像について、現像処理をして、書き出した時の時間を計測しました。
TUF Gaming A14のRyzen AI 9 HX 370であれば、Core i7-14700HXとほぼ同じ書き出し時間で、非常に高速です。また、Zenbook S 16のRyzen AI 9 HX 370も、比較的速かったです。

※プロファイル補正、露光量+1、シャドウ+10、自然な彩度+10、ノイズ軽減+10を適用した100枚のRAWファイル(1枚あたり約45MB)を同じ書き出し設定でjpegに書き出し、所要時間を計測
:レビュー機で計測したスコア(他のスコアは別のPCで計測した代表値)
まとめ
今回、Ryzen AI 9 HX 370のプロセッサーについて、各種ベンチマークなどを計測しました。
今回計測した2台のノートPCのうち、高いCPU電力で動作するTUF Gaming A14については、Core i7-14700HXを超える高いマルチコアスコアが出ていました。低いCPU電力動作するZenbook S 16でも、Core Ultra 7 155H以上のマルチコアスコアが出ていました。
グラフィック性能についても、GeForce GTX 1650に近いベンチマークスコアが出ていました。
省電力でありつつ、CPU電力次第で高いパフォーマンスも出すことができるプロセッサーであるため、色々なジャンルのPCで、CPU電力設定を変えながら使われそうです。実際に今回テストで使用したノートPCも、TUF Gaming A14のゲーミングノートPCの場合は、CPU電力を高めにしてパフォーマンス重視の設定になっていましたし、Zenbook S 16の超薄型ノートPCの場合は、CPU電力を低めにして発熱および消費電力を抑えるような設定になっていました。もし、パフォーマンス重視でノートPCを購入する方は、想定よりも性能が出ない可能性もあるので、どのくらいのCPU電力で動作しているのか、各種レビュー記事を見たほうがいいと思います。

1975年生まれ。電子・情報系の大学院を修了。
2000年にシステムインテグレーターの企業へ就職し、主にサーバーの設計・構築を担当。2006年に「the比較」のサイトを立ち上げて運営を開始し、2010年に独立。
毎年、50台前後のパソコンを購入して検証。メーカーさんからお借りしているパソコンを合わせると、毎年合計約150台のパソコンの実機をテストしレビュー記事を執筆。
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